ひねくれ作家様の偏愛
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翌週の水曜、やはり海東くんからの呼び出しで私は彼の仕事場兼自宅のマンションにやってきた。

駅としてはゆりかもめの芝浦ふ頭駅にある彼のマンションは、30階建のおそらくバブル期に建てられた古いものだ。
周囲は古い団地群や大手メーカーの工場が並び、ウォーターフロントの特徴ともいえる草のはびこった空き地やすでに使っていそうもない倉庫も点在している。

空虚で、裏寂しい場所に突っ立ったマンションは、彼によく似合う。

彼の住む27階の部屋を訪れると、かたちばかりチャイムを押して、合鍵でドアを開けた。
これも、彼の要望だ。

迎えに出るのが面倒だそうです、大先生は。

玄関で気づく。普段より空気が澱んでいた。
潔癖な彼にしては珍しい。

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