ひねくれ作家様の偏愛
エレベーターが27階に到着する。
海東くんは私の腕をつかんだまま、すっかりふてくされた表情になっていた。

まるで子どものようなしょげ方に、私は罪悪感でいっぱいになった。

抱き締めてあげればいいのに。
思いっきり甘えさせてあげて、私も溺れきって。
それが彼を支えると決めた私の仕事でしょう?

彼の全部を受け入れられないのは私のズルさと弱さ。
いつかくる終わりが怖くて、身が竦む。
痛みを避けたくて、私は彼と一定の距離を保とうとしてしまう。


「本当にごめんね」


いっそ関係を持たなければ、お互いこんな気持ちにならなくて済んだのかもしれない。
うつむく私に、海東くんが思い詰めた声で言う。


「じゃあせめてキスさせてください」


エレベーターの前、27階の通路には誰もいない。
私は困惑しつつも頷いた。

海東くんが一歩近付く。
エレベーターのドアに押し付けられる格好で、私たちは唇を重ねた。

海東くんの舌は熱い。
吐息もとろけそうに熱い。
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