ひねくれ作家様の偏愛
同時に、拒絶しなければという防衛本能がはたらく。

彼の望むままに抱かれてしまうのは簡単。私だって嬉しい。
だけど、溺れてしまいたくない。

私たちの恋愛は共依存を伴っている。
彼が依存関係から立ち直れば、私は不要。

いつか、恋は終わる。


「ダメだよ。打ち合わせなんて言葉を使って、ずるいよ」


「ずるくていいです。桜庭さんを独占できるなら、なんでもする」


何度も自分の中で繰り返した懊悩を今再び反芻する。

彼に溺れちゃいけない。
この恋は今だけのものだから。


「今日は、一度会社に顔出さなきゃ行けないんだ。泊まれない」


「何、ソレ」


「ごめんね。どうしても、月曜に印刷所に回したい原稿が今日届くんだ」


本当のこと。だけど、実際はそれほど急ぐ仕事じゃなく、猶予はたっぷりある。
私が逃げ口上に使いたいだけだ。
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