ひねくれ作家様の偏愛
パシャン。

そんな繊細だけど取り返しのつかない音を立てて、何かが割れた。


私は振り向く。
飯田もそちらを見る。

屋上庭園の入り口に立った海東くんは、地面に華奢なワイングラスを叩きつけ、私を見つめていた。

海東くんの切れ長の瞳は、何の色も映していない。
深海のように光のない暗い瞳だ。

いつからいたのだろう。

どこまで聞いていたのだろう。

じゃりっとグラスの破片を踏みにじり、海東くんは私たちに背を向けた。
ドアの向こうに消える背中。


「海東くん!待って!」


私は叫び、飯田を置き去りに彼を追いかけた。
パーティー会場内をダッシュするわけにも行かず、人波を避けながら、早足で抜ける。

受付にいた小松に少し出てくる旨を伝え、エレベーターホールへ。

海東くんの姿はない。

もどかしくエレベーターを待ち、やってきた端の一基に先に乗っていた客を押し込むように飛び乗った。
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