ひねくれ作家様の偏愛
「高校一年生の時にゲームシナリオのコンテストで賞をいただいて、どんどんお仕事をいただくようになったら、あっという間に自立してしまいました。私の母を味方にして、東京にマンションを買い、高校の編入を決め、この家を出てしまいました。あの子が名乗っている“海東”は私の旧姓です。私の母と養子縁組をして、戸籍上も“海東智”。あの子はこの家の一員であるつもりはなかったのでしょうね」


「それでは……海東くんとはしばらく会っておられないのですか?」


つい彼の呼び方がいつものものに戻ってしまった。
お母さんが色々告白してくれているのだから、私がしゃちこばっていても仕方ないと思ったのだ。


「ええ、もう何年も会っていません。こちらから連絡しても、なかなか返してくれませんし。……だから、あの子がふらっといなくなったとしても、この実家を頼ることはないでしょう。あの子の味方だった祖母も、あの子が東京に出てすぐに亡くなっていますから」


お母さんは頭を下げる。


「ご迷惑をおかけしながら、お力になれず申し訳ありません」


「いえ、とんでもないです!頭を上げてください!」


私は恐縮して、顔の前で両手をぶんぶん振った。
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