ひねくれ作家様の偏愛
「私はこの家の後妻なんです。智は連れ子です」


え?今なんて?

急に爆弾を投下された気分だった。
不意打ちの家族の事情告白に、なんと答えたものかわからない。

お母さんは真顔で続ける。


「智が8つの時に見合いで。この家は農家で働き手と主婦が必要でしたし、先妻が思春期の女の子を二人残して亡くなっていたもので。私も夫に先立たれてから、母に智を見てもらい働いていたので、智の将来も考え一もニも無くこの話に飛びつきました」


お母さんは瞳をすがめた。
見れば見るほど海東くんに似た瞳だった。


「すぐに廉(れん)……さっきの子です。あの子が産まれて、先妻の子たちはそれをきっかけに私になついてくれました。でも、それが智の居場所を奪ってしまったようです。家族にも学校にも馴染めず、部屋で本を読んでばかり。あとは、私の母が暮らす元の家に入り浸っていました」


「あの……」


なんで急にそんな話を私にしてくれるのだろう。

私は彼の担当でしかない。
お母さんは私の困惑を素知らぬ顔で話を続ける。
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