ひねくれ作家様の偏愛
「俺のこと信じらんないっつうなら、他を当たります」


「いや……信じますよ。今回に関しては言うことを聞いてもいい」


裏があろうが、何だろうが、やりたい仕事が目の前にあって逃す気はない。
プライドだけで食っていけないのはこの数年で身に染みてわかったことだ。
俺は飯田に向かって頭を下げた。


「お仕事、お受けします。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします。海東先生の紡ぐ物語、期待しています」


飯田が初めてといっていいような真面目な口調で頭を下げ返してきた。

ずっと侮られていると思っていたけれど、俺がやるべき仕事を見せれば、周囲の態度は変わる。
俺が変わったように、この男も少し変わってきているのだろうか。

少なくとも仕事に関しては、信頼してやってもいいのかもしれない。

俺が見直しかけた次の瞬間、飯田がぱっと顔をあげた。
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