ひねくれ作家様の偏愛
「ホントかよ~。前回もそう言って間に合わなかったじゃん」


木原編集長は笑い話っぽく言うけれど、私は本当に肩身が狭い。

海東くんが文芸小説を書くにあたって、超えなければならない壁はこの木原編集長。

ライトノベルの出版や営業戦略は、『ライナー』グループで行うけれど、『ともし火』での連載や文芸書の単行本出版は『ともし火』グループの管轄。
海東くんが新しい作品を出版するためには『ともし火』グループで認められなければならない。
現在、『ともし火』グループの契約作家の扱いをさせてもらっているのに、海東くんはここ一年半、出版会議に小説を間に合わせられたことがない。


「ゲームシナリオから干されたあの坊ちゃんを飼ってられるのは、『アフター・ダーク』でうちも随分儲けさせてもらったからだ。そろそろ、その貯金も底を尽くぞ。真面目に書く気ないなら、来期は契約作家の枠から外すから」


契約作家に明確な定義はない。
うちで文芸書籍を出していて一度でも契約書を交わしていれば契約作家の扱いとなる。

しかし、彼は3年前ライトノベル『ライナーズ文庫』から『アフター。ダーク3』を出版したのを最後に何も書いていない。
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