ひねくれ作家様の偏愛
部屋を出ようとすると、海東くんが背を向けたまま言った。


「今、書いてるやつがもう少しでできるんで、リビングで待っててください」


「また別なものを書いているの?……出直すから急がないで。来週中にまた来るようにする」


「駄目です」


海東くんが命令口調で言った。


「リビングで待つこと。俺の担当でしょ」


嫌だ、と思った。

彼は私を原稿の運び屋で、ストレス解消相手程度にしか思っていない。
都合よく担当扱いされても困る。


でも、彼の急いた態度にも違和感は覚えた。
なんで、そんなに焦っているのだろう。

出版会議までは1ヶ月半。
海東くんは速筆だし、じっくり練っても充分間に合う。

なのに、彼はここ最近、次々に作品をあげてくる。

今、私が帰っても海東くんは書き続けるだろう。

一体、何が彼をそこまで急き立てているのだろう。

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