ひねくれ作家様の偏愛
その言葉で、早くも言いたいことがわかったのだろう。
海東くんは新しいマグカップにコーヒーを注ぎ直し、私の前に置くと、自分はソファーにはかけず、窓辺に行ってしまった。

随分してから細い声が言う。


「また別なものを書きます。今週後半に来てください」


「海東くん、焦らなくていいよ。まだ時間は……」


「時間はあるんですよね。わかってます」


私は思い切って立ち上がった。
徹夜明けだからという理由ではなく、海東くんの様子に奇妙な焦燥が見えた。

今まで散々怠惰に浸りきって、書かない時はまるで書かないできた彼だ。
この変化はなんだろう。
一体どうしちゃったというのだろう。

海東くんの横に並び、普段は絶対しないけれど、その肩に左手をのせる。

大丈夫?
そんな同胞意識。

きみのことを本当に心配している。そう、伝わるだろうか。

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