初恋しました
「あーあ、本なんて僕持ってないよ。
兄ちゃんのは全部難しすぎて意味不明だし」
どうしよう、と肩を落として部屋から出る珀に名声をかける。
「ほら、これ貸してやるよ」
財布の中から出したのは図書館の利用カード。
「わざわざ買うよりもそれで借りた方がいいだろ?
それに、今なら図書館に読書感想文オススメの本のブースができてるから悩まなくてすむ」
「兄ちゃん……持つべきものはかっこよくて頭のいい兄ちゃんだね!」
キラキラとした瞳を向けられて思わず苦笑。
「褒めても何もでないぞ」
「出さなくていいよ。
その代わり僕といっしょに図書館、」
「午後からは先約があるから無理だな」
あからさまにしょんぼりした珀だったが、それなら仕方ないとカードを持って図書館へ行った。
その背中に気を付けて行けよ、と声をかけて中断していた課題に向き直る。
一段落したところでちょうどよく約束の時間になったので、俺も家を出た。