君のために歌う歌
出てきたバンドは、爽やかな印象だった。


演奏も歌も上手い。


ずっと続けていればファンも増えるだろうな……そんな上から目線な事を考えながら、宙子はコーラを少しずつ飲んでいた。



(4人組だったけど、陽翔1人の方が力があるな。


それは、私が陽翔を好き……だからなんだろうか。)




宙子が陽翔の事を考えているうちにバンドは5曲を歌い終わり、拍手を浴びながらステージからはけていった。


グラスを持っていたので音の出ない拍手を宙子もした。



暗転して、薄明かるくなる会場内。



「ね、君一人?」



左側からいきなり話しかけられて宙子は飛び上がった。


見ると、それは知らない男性だった。


剃り込みの入った頭に、胸元の開いたシャツ。

ジーンズにはチェーンがついていた。



少し年上だろうか。宙子よりずっと背が高い。
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