ごめん、好きすぎて無理。
『……お前…何を言ってるんだ……?』
紗奈のお父さんはお母さんの腕を引き、そう問いかけた。
『あなた、私たちの負けよ…』
紗奈のお母さんは少し困ったような、でも微笑みながらそう言った。
『……負け……?』
『そう、私たちの負けよ。
だって、あなた見て?
どんなに私たちが反対しても非難しても、それでもこの子たちは諦めてないわ。
それどころかお互いを守ろうとしてる、お互いに愛してるからそうできるのよ。
これだけ想い合ってるの、例え誰が反対し続けても、この子たちの絆は深くなるばかりよ…』
『………でも、愛してるからといって、それが紗奈の幸せに繋がるなんて…そんなこと』
紗奈のお父さんはお母さんの言葉に食いつくかのように、そう言葉を放つ。
『人は幸せになるために必死になるんだと思うの。
だって幸せかどうかなんてもうちょっと先の未来の自分が想うことでしょ?
紗奈も陸君も、二人で幸せを感じたいから、今、私たちと向き合おうとしてるのよ。
そんな二人が幸せになれないと、あなたは本気で思うの?
私たちの娘が愛してる人だと、守りたい人だと、一緒に幸せになりたい人だと、そう言ってるの。
私たちが応援してあげないで、どうするの?』
紗奈のお母さんの言葉に、紗奈のお父さんも黙ってしまう。