大人の恋はナチュラルがいい。
「うちを?」
驚いて聞き返した私に、太一くんはぎゅうっと口角を上げ目いっぱいの嬉しそうな顔をして頷いた。午後の日差しが彼の笑顔を煌くように映し出すから、希望に溢れるドラマのワンシーンみたいで否が応にも胸に熱く響いてしまう。
「凄くいいと思わない?同じビルで一緒に働くの。どんなに忙しくても大変な時でも、ヒヨコさんがすぐ側で頑張ってると思うと俺も絶対頑張れる。職種全然違うけど、一緒に働いてるって張り切れる。俺、休憩のたびコーヒー飲みに行ってヒヨコさんに元気もらうんだ」
最後に照れくさそうに肩を竦めて「それがオレの夢」と笑った太一くんから、私は目が離せなかった。ただ、嬉しくて胸が苦しいくらい締め付けられて、声も上手に出せなかった。
――すごく好きだ。私、太一くんがすごくすごく好きだ。自分には思いも付かなかったこんな素敵な夢を語ってくれた彼が、好きで好きでたまらない。そして、ああ、その夢叶えたい。叶えたいのに。
「ヒヨコさん?」
涙をこらえたせいで強張った私の顔を見て、太一くんが驚いたように名を呼んだ。けれど、ついに抑え切れなくなった涙は堰を切りとめどなく幾筋も頬を伝っていき、それに誘発されるように私の中の感情も爆発した。
わあわあと声をあげ子供のように泣きじゃくる29歳の痛々しい姿を目の当たりにし、太一くんはたいそうな驚きととても困惑した様子を見せた。
「どっ、どうしたのヒヨコさん!?」
「私、私……その夢叶えたいよお。太一くんと同じビルで働きたい、一緒に近い場所で働いて元気を分け合いたい。なのに……それが出来ないよお~~」