赤いエスプレッソをのせて
占領してるのも堪能してるのも、そして惑わしているのも、私。

   ワ タ シ
彼が『お姉さん』を見つけたんじゃない、私が彼を掴んだんだ。

塞翁が馬ってやつだろう。

キスをするほんの数分前までは『なんなのよコイツ』みたいな存在だったショーが、今は私の中にある。

彼を全身全霊で感じられているということが奇跡のようで、ただ漠然とした、炎が激しく盛るような幸福感しかなかった。

頭のどこかではまだ――コイツのこと嫌いだったんじゃないの、なんてことしてんのよ私、早まってんじゃないわよ――理性ある私が訴えかけていたけど、聞こえないふりをした。

今この瞬間のほうが気持ちいいし、居心地も、いい。

だからなのかはわからないけど、初めてのセックスなのに怖くなかった。

単純に、来る、とだけ思った。

彼のすべてが、私の中へ津波のように押し寄せてくること、マグマが侵攻してくるように熱くさせられること、それだけがわかった。

わかってまた、酔ってしまいそうだった。

まあそれは、彼が優しかった、というおかげもあるのだけど。
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