赤いエスプレッソをのせて
彼は、本物のお姉さんに向けていたいろんな感情が、生まれ変わったという私のうそによって『愛情』へと変貌し、私は私自身をどういう形であれ抱き締めてくれる――今までどうしても見つけられなかった――彼を手に入れられたことが、ただ幸せだった。

私も彼も、うその世界を味わう仲間なのだ。

彼は私にお姉さんを、私は彼に愛情をほんのわずかな時間で、突発的に望んだだけのこと。

結果的に、私達はどちらも満足しているんだ。

このうその世界に。

「守ろうとしてくれれば、守りきれるわよ」

と、彼の顔を見るために少し離していた頭を、彼の胸につけた。

ドクン、ドクン、ドクン、と彼の胸の内で、心臓が脈を打っている。

血が通っている。

ああ、彼は生きてるんだ。

肩の千代のように、幻でもなんでもない――本当に手に入れた、現存するものなんだ。

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