赤いエスプレッソをのせて
「そうだよね」

うなずいた彼が、私の頭をギュッと抱いた。

彼の匂いが近づく。

彼の存在そのものが近づく。

頭の奥で、鈍く低く自分の心臓が鳴っているのが聞こえた。

今この気持ちのまま、眠ってしまいたい。

この感情を、永久に保存したい。

今の私達がどんなに歪んでいると他人に指摘されても、ただこの時は、幸福感と満足感しか、わからなかった。

――いいや、わかりたくなかった。

そして、わかってやるつもりも、なかった。

私は、これでいいんだ。
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