赤いエスプレッソをのせて
「ま、まあ……人それぞれの恋愛に私はとやかく言いませんから、いいんですけどねぇ」

口ではそう言いながらも、どこか含むところのあるような仲代先生は、そして訊いてきた。

「それでどうですか? 山久さんと付き合い始めて、変わりましたか? ……たとえば、妹さんの幻視がなくなったとか」

首を横に振ることで、私はそれを否定した。

彼女には見えないだろうけど、今も私の肩にいる千代を、紹介するように手で指し示す。

やや白く光って見える千代が首をかしげたような気配があったけど、気のせいじゃないだろう。

ふぅむぅ、と先生はオヤジ臭く唸った。

「やっぱり妹さんの幻視に関しては、彼女を殺してしまったという罪悪感を抱いてもらう以外に治療法はないみたいね」

そして彼女はデスクの上のアンケート用紙に目を落とす。

それは彼女がいつも患者に書かせているもので、患者の近況や状態をアバウトにでも、最低限把握するためのものらしい。

これがあるのとないのでは雲泥の差があるとかないとか、彼女は自負してるそうだ。
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