赤いエスプレッソをのせて
パッと顔をあげた先生は、そして言った。

「黒井さん――私の見解じゃ、アナタって子供の時から自分を認めてもらいたいっていう欲求が強いようですから、まあ、山久さんと一個人の情愛でくっつけばそれが解消されて、一緒に妹さんの幻も消えると思っていたんですがねぇ……」

「そんなに簡単にいくんなら、もっと早くに見えなくなってますよ」

と苦笑いよろしく答えると、仲代先生は腕を組んで、小さくまた唸った。

時々思うのだけど、悩める美女っていうのはどうしてこう、なまめかしくみえるんだろう。

女の私ですら不思議でたまらない。オーラかしらね。

「……今日もまた催眠ですか?」

と、長い黙考に痺れを切らして訊ねると、先生はゆっくりと組んでいた腕を崩し、

「――いいえ」

カッコよく足を組んでみせながら、答えた。
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