赤いエスプレッソをのせて
「そして病人を治そうとする医者もいる」

口は開かず、彼女を見つめて、次の言葉をただ待つ。

「少年から言えば、ちょっとしたことでも体調が崩れてしまうのは当然で、それしか知らない少年は、他人からどんな風に言われても自分が不幸な生まれだということに気付きません。

そして、そうと知らないままならば、自分を治療してほしいと強く望むことも、ありません」

「……それ、私のことですか」

自虐的な響きが目立つ声で訊くと、仲代先生は仕方なさそうに、うなずいた。

「まあ、ええ、まあ……そう取ってもらって結構です」

言って、深く背もたれに寄りかかった。

大きな胸が強調され、全体の優雅さを含めてみるとほんと、どこか超越的な女王さまってのがどんな人物なのか、思い知らされる。

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