赤いエスプレッソをのせて
「思うに、アナタは今のままで問題はないと思います。当然千代さんという『個性』は残ることになりますけど、アナタはそれに苦痛を覚えることはあまりないでしょう?

今までの経験のおかげかせいか、アナタは強さを持ってるわ。アナタが経てきた、アナタならではの強さ。

それを信じるならたぶん、もうこれ以上の治療は不必要です。簡潔に言うのなら、アナタはもう大丈夫そうなのよ」

「は、あ……」

私だけの……強さ。そんなものがあるんだろうか。

千代の代わりのような人生を送って、今は明海さんの生まれ変わりだといって……

いつもだれかの中へ自分を割り込ませている、『自分』というものを持ててない私に、それでも独自の強さなんかあるの?

張りぼてや虚栄じゃないの?

思う傍ら、千代へ目をやる。

妹は、私のことを一心に見つめてきていた。

途中でやめてもいいの? と焚き付けているようにも、私を消さないでと不安がっているようにも見える。

やや間を開けて、私は千代とは違うなにかが肩にのし掛かっている気がして、大きな溜め息を落とした。

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