赤いエスプレッソをのせて
スクランブル交差点で立ち止まる。
すぐ横を見ると、フリフリのついた日傘を差した厚化粧のおばさんが、黒のプードルを引き連れていた。
本人は気取ってるつもりでも、なんとまあ『それっぽい』おばさんだろう。
「ちょっとぉ、なんなんですの、さっきからアナタ?」
「え、ぁ――すみません、その、悪気があったんじゃないんです。えーと、すみません」
気付けば、いつの間にかおばさんがとんでもない形相で私を見据えていた。
どうやら笑いをこらえきれていなかったみたいだ。
おばさんのど派手なくらい真っ赤な唇が、極太のミミズみたいにぐにょりと曲がっている。
正面から見るとなおさら、気取ってるというよりも前に、昔話の魔女そのもので、ほんとにおかしくて。
仕方なしに、おばさんから数メートル離れたところに移動して、笑いの波が過ぎていくのを待った。
と、妙な悪戦苦闘の最中に、信号が青へと変わった。
歩きながら肩を震わせて忍び笑いを漏らさないように、ひとつ、こほんと咳をして気持ちを収める。
すぐ横を見ると、フリフリのついた日傘を差した厚化粧のおばさんが、黒のプードルを引き連れていた。
本人は気取ってるつもりでも、なんとまあ『それっぽい』おばさんだろう。
「ちょっとぉ、なんなんですの、さっきからアナタ?」
「え、ぁ――すみません、その、悪気があったんじゃないんです。えーと、すみません」
気付けば、いつの間にかおばさんがとんでもない形相で私を見据えていた。
どうやら笑いをこらえきれていなかったみたいだ。
おばさんのど派手なくらい真っ赤な唇が、極太のミミズみたいにぐにょりと曲がっている。
正面から見るとなおさら、気取ってるというよりも前に、昔話の魔女そのもので、ほんとにおかしくて。
仕方なしに、おばさんから数メートル離れたところに移動して、笑いの波が過ぎていくのを待った。
と、妙な悪戦苦闘の最中に、信号が青へと変わった。
歩きながら肩を震わせて忍び笑いを漏らさないように、ひとつ、こほんと咳をして気持ちを収める。