赤いエスプレッソをのせて
♪
歩くのは繁華街。レストランやらショッピングセンターやら、なんでもありのアーケード。
ヤマヒサショウジ
山久尚司――それが私の手を引く彼、チューリップの中で寝ていた男の名前。
一言で表現するなら、変人だ。
だって、髪は赤いし、ヤンキーかと思えばそうじゃないし、自分をしがない絵描きって言うし……そして、殺してくれ、なんて言う。
だから彼は、変人。
その変人に、私は今連行、いや、誘拐――違う、拉致……でもない、そうだ、デートをさせられていた。
(なんだってのよ、コイツ。ねぇ、千代?)
心の中だけで訊ねながら、私は山久に手を引かれていく。
何度か反抗しようとしたけど、山久はヒョロヒョロした体格のくせにバカみたく力が強くて、振りほどけやしなかった。
デートっていうのはまさにデートで、別にヤマシイとことかに引っ張り込まれることはない。
さっきだってアイスを食べただけだし、その前には花屋で、カーネーションをひとつ買ってもらった。
母の日じゃあるまいしって思うけど。
殺してくれるお礼だとかなんだとか。
勝手に決めつけて、山久は話を、デートを進めていく。
歩くのは繁華街。レストランやらショッピングセンターやら、なんでもありのアーケード。
ヤマヒサショウジ
山久尚司――それが私の手を引く彼、チューリップの中で寝ていた男の名前。
一言で表現するなら、変人だ。
だって、髪は赤いし、ヤンキーかと思えばそうじゃないし、自分をしがない絵描きって言うし……そして、殺してくれ、なんて言う。
だから彼は、変人。
その変人に、私は今連行、いや、誘拐――違う、拉致……でもない、そうだ、デートをさせられていた。
(なんだってのよ、コイツ。ねぇ、千代?)
心の中だけで訊ねながら、私は山久に手を引かれていく。
何度か反抗しようとしたけど、山久はヒョロヒョロした体格のくせにバカみたく力が強くて、振りほどけやしなかった。
デートっていうのはまさにデートで、別にヤマシイとことかに引っ張り込まれることはない。
さっきだってアイスを食べただけだし、その前には花屋で、カーネーションをひとつ買ってもらった。
母の日じゃあるまいしって思うけど。
殺してくれるお礼だとかなんだとか。
勝手に決めつけて、山久は話を、デートを進めていく。