赤いエスプレッソをのせて
言われてみれば確かに、歳上の風格は所々に見てとれるけど、だけど、浮かんでいる笑顔がそれをあまりにも優しく緩和してしまっている。

まさかこういうのが、大人のなせる業?

大人の魅力っていうヤツなわけ?

もうわけわかんない。

いつのまにか浮かしてしまっていた腰を下ろし、テーブルを指で突っつきながら、酸性の言葉を吐く。

「で、その二十四歳さんがどうしていきなし、私に殺してくれなわけなんですか? 見たとこ、全ッ然なにか問題抱えて悩んでるってカンジしないんですけど?」

彼は、苦笑と失笑を、にこやかな笑顔を崩さないまま、器用に混ぜ込んだ。

「いえ、悩んでいるんですよ、こう見えても。悩み続けているっていうほうが的確ですかね。なにせもう、十年にもなるんですから」

ちょうどその時、ウェイターがエスプレッソとオレンジジュースを、運んできた。
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