赤いエスプレッソをのせて




殺す人間がいれば、当然、殺される人間もいる。

人が殺されるのを見る人もいれば、人を殺しているのを見る人もいる。

二つは『殺人』という行為のもとに、必ず現れる結果だ。

食べるものと食べられるもののように、必ず、どちらかひとつも、欠くことはない。

私はその一方、『殺した人間』だ。

自分の手で、意思で、妹を殺した。包丁でぶっ刺してやったのだ。

そして彼は……山久は、『殺された人間』だった。

正確に言うなら、『家族を殺された人間』だ。
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