私の仕事と結婚
ずっと無言だった典弘は車に乗り込むと私を見て言った。

「ごめん。」

「ちょっとびっくりしただけ。」

ははは…と笑って見せたが、多分わざとらしかっただろうな。

「人前であんな事、自分がするとは思わなかった…。」

ハンドルに腕を乗せて前を見つめたまま、溜息をつく典弘。

「歩夢の前では感情が素直に出過ぎてしまう。」

ポロポロと言葉が口から出てくるみたいだ。

「呆れちゃった?一緒に居るの嫌になった?」

弱々しげにつぶやく典弘は、本当に心配そうな顔をして私を見る。

「本当に飾らない姿を見せてくれてるのね。ちょっと嬉しいかも。もっと私もそのままの私を見てもらわないとね。」

それが顔を赤くした私に言える精一杯だった。

「まさにあの展示場でのユニットバスを見る姿がそうじゃないの?」

典弘の左手が私の右手を取る。

「帰ろう。早く二人っきりになりたい。」
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