9歳差は、アリですか?
笹山は意外そうに立原を見る。

「立原さんって冷めているイメージだったけどそうでもないのかな?俺もそう簡単なは諦められないし、ーーーじゃあ俺攻めるね、立原さんに振り向いてもらいたいし」
「そうですか。ご勝手にどうぞ」

あたしがまた悠くんと付き合えるくらい望み薄だけど。というのは心の中で付け加えた。
しかし、ようやくわかった気がする。本当に好きになれば、諦められない、振り向いてもらいたくて苦しいくなるのだ。でも、嫌な痛みではない。

「課長、明日東京出張なのであたし帰りますね。ーーーそう簡単に人は路線変更できないですよ?いくら望み薄でも」

明日一緒に東京出張行く手前、立原はやんわり釘を刺すつもりもなく、しっかりと打ち込んだ。新幹線内で口説かれるのは体力消耗に繋がる。面倒くさいことはしたくない。

打ち込まれた側の笹山は笑って誤魔化す。それに対し立原も久しぶりに微笑んだ。先程まで暗く世界の終わりのような気分とは全く違う。

失恋しても前向きでいられるのだ、昔の浅岡や笹山のように。その事を初めて知り、浅岡をもっと好きになる。立原には浅岡と会わせる顔なんてないが、会いたい、抱きしめたい、キスしたい。他にも普通の恋人らしい事は出来なくても、立原と浅岡らしく恋人をしたい。

図々しくても、我儘でも浅岡が欲しい。好きだ。東京帰ったら、口説きに行こう、年下の可愛い恋人がすでにいても。

9歳差はアリなのだ。
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