9歳差は、アリですか?
二カ月ぶりに本社に出勤し、政治部のフロアに入った。一応まだ立原のデスクはそのままにしてあり、会議までの時間そこでゆっくりする。

「おお立原さん、久しぶり!名古屋はどう?」
「部長、お久しぶりです。名古屋も結構楽しいですよ。カフェがたくさんあって、休日は充実してます」
「そうか!でも立原さん早く帰っておいでよね。政治部のまとめ役兼クッション材だった君がいなくて、だいぶ僕は困っているよ。みんな言いたい放題でさあ、特に品川と青木。君が仲介してたから正反対の二人がうまくできてたのに、いなくなった途端正面衝突事故起こしちゃって、今現在も超険悪。お願いだから早く帰って来てね」

よっぽど大変だったのだろう。饒舌な上司を見て苦笑いする。立原はなるべく面倒くさくない方で人生過ごしたいので、職場での衝突は途轍もなくマイナスな時間となる為、クッション材として働く方がましと考えてやっていたが、思った以上に重要だったようだ。自分が必要とされているという事を実感するとやり甲斐が出てくるんだなと改めて発見した。

「おお立原!帰ってたのか!」
「立原さん!やっと帰って来たんだ、目の保養ー」
「いくら鉄壁に無表情な無愛想でも職場に女子がいるかいないかでだいぶモチベーション変わるんだぞ。早く帰ってこいよ」
「立原さんが政治部フロアでオアシスってやっと気づいたんすよ!」
「ドライ女でも、女ってだけでオアシスだったよなあ」

しかしフロアの同僚は立原に気付くなり、セクハラすれすれ発言を浴びせる。ドライだったが、女子というだけでだいぶ貢献していた事に初めて気付く。だいぶ失礼な発言も見受けられるが。

久しぶりの同僚たちとの会話で、意外と楽しく笹山の事はすっかり忘れてしまっていた。笹山が近づいてきてようやく気付く。

「あ、課長すみません」
「いや別いいんだけどね。久しぶりの東京だろうし」
「立原、こいつ誰だよ。新しい彼氏か?久々じゃね?」
「名古屋支局の笹山課長です。ーーープライベートでは全く関わりのない方です」

あらぬ誤解は抱かれたくないので、後半を強調する。
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