LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―
K、H、A、N、と。
海牙は綴りを言った。
鈴蘭が小首をかしげた。
「何かの略称ですか?」
「さあ? ぼくは知りません」
つかみどころのないやつだ。
屋根瓦を見上げると、何かの紋章が入っていた。
家紋と呼ぶにはシャープなデザインだ。
目を凝らすと、文字も見えた。
“KHAN”と刻まれている。
邸宅は、天井の高い平屋建てだった。
靴を脱いで、長い廊下を歩いていく。
相変わらず、海牙は足音をたてない。
広い中庭を見ながら、廊下の角を曲がった。
そのとたん、海牙が足を止めた。
つられて立ち止まったオレの背中に。
「きゃっ」
鈴蘭がぶつかった。
「離れろ」
「す、すみません」