真っ赤なお伽話
次の日、机の上に菊の花が一輪置いてあった。
「な、何これ…」
いつものようにしずると、節子と登校してくると3人の机の上に花瓶に活けられた菊の花が鎮座していた。教室を見回してみても、クラスメイトはひそひそとこっちを見て話すだけである。ただ一人楠野を除いては。
楠野は、いつものように窓の外を覗き教室の中の出来事には無関心のようだった。楠野の周りの空間だけ教室から切り取られているような感覚を覚える。
「ちょっと、マジむかつくんだけど!?」
節子はヒステリックな声を上げ花瓶をどかす。同様にしずるも花瓶をどかしていた。
――――――誰かの復讐なのだろうか?
梨香は優しかったから、みんなに好かれていた。それゆえに私たちが恨まれる可能性は十分ありうる。
「え…」
一瞬。ほんの一瞬だったが楠野がこっちをみて笑ったような気がした。その笑顔は、これから始まる映画に期待を胸に躍らせる子供の笑顔のようであった。
すぐにあの笑顔はなくなり、いつもの侮蔑とでも言うような表情で窓から外を眺めていた。
「もしかして、キモ美の仕業!?」
節子は怒りの矛先を良美に向けた。良美は、その言葉を意にも介さずただひたすら自分の席で読書にふけっている。
「ちょっと聞いてんの!?」
視線だけを節子に向ける、良美。
「知らない。」
それだけ言うとふたたび本に視線を戻した。
教室の扉ががらがらと、音を立てながら開き担任が教室に入ってきた。
「HRはじめるぞ~…ん?どうした仲良し三人組?」
仲良し三人組とは当然、しずると節子と私のことだ。節子は激情に任せ言葉を吐きかけるが、突如何かに気づいたようにその開いた口をゆっくりとつぐんだ。
「なんでもないです。」
それだけ言うと乱暴に席に座り、黙り込み、携帯をいじり始めた。しずると私も席に座り、節子同様黙り込む。
突然、バックの中に入っていた携帯が低いうなり声をあげ震えた。バックを開け携帯を取り出すと一通のメールが届いている。

「何、これ…」
送信者のアドレスにはまったく見覚えがない。ただの悪戯とみなして私は携帯をバックに放り込み万年、机の中に居住している教科書を開きその中で漫画を読み始めた。
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