真っ赤なお伽話
僕はもう一度資料に視線を落とし事も無げに言の葉を漏らす。
「まぁ、いろいろとめんどくさい事に巻き込まれていてね…この街に住んでいる以上…というか、日本という国に戸籍を置いていて、かつ日本語をある程度扱える以上、件の殺人鬼については当然知っているよね?」
「ずいぶん回りくどい言い方するね。」
いつぞやの殺人中毒者の言い回しに微笑を零す斉藤さん。「よいしょ。」と、言いながら僕の真横に座った。以前のように一人分空けるなんて事はせず。何てなれなれしい距離だろう。
「知ってるよ。十人殺したって奴でしょ?」
「うん。その件の解決をとある知人に頼まれてね。何の因果で僕が…」
実際何の因果か明白ではあるが斉藤さんに知らせるわけには行くまい。聞かせたらただの変態扱いだ。自分の思考にくすり、と笑いを漏らすと斎藤さんは不思議そうな顔で覗き込んでくる。
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