いと。
エントランス横の来客用駐車場に車を止めた薫は、無言のままエンジンを切り、ドアに手をかけた。
「待って。………ちゃんと、帰れるから。」
その動きを制止するように俯いたままそう告げ、バッグを抱えて車を降りる。
ふわふわとしたままの身体を奮い立たせて笑顔を向けて手を振り、フラついた姿を極力見せないように急ぎ足でエントランスへと入った。
「愛!」
そう呼ばれた気がしたけれど……、ううん。
確かにそう呼ばれたけれど……、
振り返らずに帰った。
涙を留めておくのが、もう限界だったから。
左手の傷は、これでもかというくらいズキズキ疼いた。