いと。
明日の検査予約の通知を看護婦さんに渡され帰ることになった私は、迷惑をかけてしまった申し訳無さとこんな事態を引き起こした自分への苛立ちでいっぱいだった。
「仕事は休めるんだろ?次はいつ診察に来るの?」
「……………。」
私を気遣って荷物を持ち、背中を支えながらゆっくり歩いてくれる薫にさえ、離れて欲しかった。
それに……、どことなく感じるいつもと違う距離感。
いつになく苦しかった。
「薫、私タクシーで帰る。」
「…は?…愛?
俺が何しにここまで来たと思ってるの?」
「だってこれ以上は迷惑かけられない。薫だって忙しいのに…。
大丈夫だから。心配しないで、ね。」
訝しがる薫に精一杯笑顔を作ってそう言った。
何より、こんなみっともない自分をこれ以上晒したくなかった。
「……………なんだよ、それ。」
眉を顰めて渋い顔をする薫から、彼にしては棘のある声が呟くようにくぐもって耳に届く。
次の瞬間…
「…っ!!!」
行き交う人も多いと言うのに急に横抱きに抱え上げられ、そのまま車へと歩き出されてしまった。
「ちょっ…と、薫!?
降ろしてよ、こんなの恥ずかしい!」
「…………」
怒ったような表情で無言の薫は私の言葉を聞こうとしない。
「薫っ!……ねぇ薫。…………薫ってば!かお、る…っ。」
情けなさからか、薫の強引さに気持ちが折れたのか…私の瞳には徐々に涙が溜まり、声は…小さく、掠れていった。
結局薫の首に腕を回し、顔を埋めたまま車に運ばれた私は……そのまま助手席に乗せられ、無言のまま自宅へと連れて行かれた。