いと。


俺の声は確かに届いていた。

でも…愛は振り返らずにそのままマンションへと入っていった。


きっと、……いや、違うな。


確実に愛は、涙を隠すためにそうしたんだ。

フラフラなはずの身体を無理やり動かしているのもバレバレだった。

「…………くそ。何やってんだよ俺は!」

ハンドルに拳を叩きつけると、‘ドン’という鈍い音と車の振動が響いた。


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