いと。
「眞城さんもオープンに来て?」
そう言って指定された日にちと時間。
任された仕事を無事に果たせた安堵感や数回顔を合わせるうちに気軽に話せるようになっていた安心感からすんなりと出向いた私は、店の扉を開けてからその日がまだ開店前だったことに気づいた。
「………多久島さん?」
静まり返る店内に足を踏み入れおそるおそる彼を呼ぶと、カウンターの奥からこちらに来る彼の声がした。
「あぁ。いらっしゃい、眞城さん。」
低く甘く響く声。
その声の主を見て一瞬どきりとしてしまう。
いつも会う時とは違うその姿。
上下黒のセットアップにワインカラーのストライプのソムリエエプロン。その長めの丈は彼の足の長さを際立たせていた。
……うわ、ドキドキしちゃう。
普段のラフな格好とのギャップに私はなんだか恥ずかしくなってしまって、不覚にも焦ってしまった。
「あの、私間違ってたみたいで…。
また来ますね。」
「…っと、待った!」
踵を返し、帰ろうとするとすんでのところで腕を掴まれ、引き戻されてしまった。
「でっ…でも誰もいないですし!」
逃れようと必死で言い訳するけれど……
「いや、今夜は君の貸切。たくさん協力してもらったお礼がしたいから呼んだの。
だから座って?」
優しく微笑まれてしまい、その手を払うこともできなかった。