いと。

ーカランー

「いらっしゃいませ。あ、戸澤さま。」

営業スマイルを浮かべ俺を迎える彼女はやはりどこか寂しそうだった。

…当然か。恋人と喧嘩してからもう半月近く会っていないんだからな。

彼女はまだ何も知らない。俺が結婚相手だということも、…あのことも。

でも時間の問題だ。こいつの父親はもう動き始めた。

もうじき、今よりもっともっと苦しい思いをすることになる。

「今日は何かお探しでしたか?」

いつもと同じセリフを言う彼女との距離が少しだけ近いように感じるのは先日渡したフランス土産の効果か。

「…貴女に会いたかったと言ったら、どうします?」

揺さぶりをかけるようにわざと甘さを含めた声音を出す。

すると彼女は一瞬だけ驚いた顔をして、あとはすぐに営業スマイルを取り戻し微笑んだ。

「…ふふ。そういうご冗談お好きなんですか?意外です。

もっとも、雑貨やインテリアの話をしたいと仰っていただけてるならスタッフとしては光栄です。」




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