いと。
「………雄太くん。」
私を見つけて走ってきたらしい雄太くんは随分息を切らしていた。
薫の元を離れた私を、もしかしたら気にかけてくれていたのかもしれない。
「アイちゃん……っ、はぁ。何やってんの?元気なの?」
引いていた濡れたトランクにチラリと目をやってから肩をポンポンと叩く。
この仕草はポイントインでもよくされていた気がする。
「うん。元気だよ。ひさしぶりだね。」
きっとカラ元気だと気付かれていそうだけど無理やり笑顔を作ってそう答えた。
「……うそばっかじゃん。ま、いいや。それより薫さんのこと、知ってんの?」
ドキッとした。聞かれて当然だ。少しの間に状況が一変したんだから。
「………結婚、するって?」
雄太くんは薫にとって身内同然なんだから、相手を紹介されたとしたって不思議はない。
「それもだけど……お店のこと。」
「お店?ポイントインのこと?どうしたの?」
胸がざわめいた。お店に何かあるなんて。
「………知らなかったんだ。」
ひとつ、溜息をついてから雄太くんは寂しそうに口を開いた。
「薫さん、お店閉めたよ。マンションも…出た。」