いと。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

いてもたってもいられず、足はかつて通い詰めたその場所に向かった。

『急に、閉めたんだ。つい数日前に。ケジメつけるからって。』

結婚、するだろうとは思ってた。でも…

『いきなりオレに知り合いのバー紹介してさ。バーテン続けたいならここでお世話になれって。

ポイントインは閉めるからって。』

あのお店は…!あのお店…は………!

『すげー寂しそうで見てられなかった。だけど守るものがあるから決めたんだって。

ここは思い出がありすぎて新しい一歩を踏み出すには足枷になるからって。』

あのお店は、薫の努力が詰まった大事な大事な場所なのに……!

「はぁ、はぁ……っ!」

トランクを引きながら急ぐ足は今にももつれそうだった。

持っていた鬱陶しい傘は捨てた。

そうして懸命に走った先に………

「………う………そ…………!」

見つけたのは、一枚の張り紙だった。


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