いと。

ダイニングに用意されたのは、少量ずつの金平とおひたしの小鉢やみそ汁と、小さなおにぎりだった。

今まで縁のなかった、誰かが作った素朴な味わいのあったかい食事。

「母の味…って、こんな感じなんですかね?」

ポロリと口から出たのは素直な疑問で、節子さんを見ると不思議そうに首を傾げていた。

「あ、私の母は私を産んでからずっと療養していて、一緒に暮らしたことも一緒にごはんを食べたこともないんです。

節子さん見てるといつも、家庭の母親ってこんな感じかなって思ってて…それで…。」

語尾を濁した私の言葉を、一瞬驚いた彼女はニコニコと受け止めてくれた。

「母親なんてそれぞれです。正解なんてきっとないですよ。」

そう言って、お茶を淹れて向かいに座るともうそろそろ予定日を迎えるという初孫を産む娘さんの話をしてくれた。

『孫が産まれたらたくさん娘の手助けをしてやりたい』

そう言って笑っていた。

きっといいお母さんなんだろう。


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