いと。

節子さんが帰り日も落ちた頃、自室でボーッとしていると戸澤さんは帰って来た。

「あ、お帰りなさい。早かったんですね。お食事は……きゃあっ!何するんですかっ!」

部屋から出た私の顔を見た途端一気に縮まった距離は瞬く間にゼロになって、苦しいくらいに抱きしめてくる腕は焦りと寂しさを含んでる気がした。

「………どうしたんですか?」

「……………はぁ。」

「戸澤さん?……あっ!やっぱり風邪ひいたんじゃないですか!?私のせいであんなに濡れたから………って、あれ?」

ひょいと手を伸ばしておでこに当ててみても熱がある様子はなさそうで。

「……………。」

「……大丈夫…ですね。」

「当たり前だろ。あの程度でひくかよ。」

相変わらずメガネのブリッジを直す仕草は事務的だ。

「じゃあなんでいきなり…わっ!」

あげていた顔を再び胸に抱え込まれて強い鼓動を感じる。

「…また、いなくなってないか心配になって予定を早めて帰って来たんだ。

……よかった。ちゃんとここにいろよ。」

本当に切なく響いたそのセリフは、私の心も同じように切なくさせた。

「…いますよ。ちゃんと考えます。あなたとのことを。」


そうだ。ちゃんと、向き合ってみよう。
この人もきっとそうして向き合ってくれる。


それだけは信じて、私の心を預けようと思えるかどうか……見極めればいいんだ。


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