いと。

ワインを飲みながらの食事はどれも美味しくて、少量しか食べられない私の分を一枚のプレートに少しずつ盛り付けてくれた彼の心遣いはとても嬉しかった。

後片付けはやるからとひとりで済ませ、お風呂へと向かった彼を見送りソファに腰を下ろす。

ふと、思い出したのは雨の中私を探しに来てくれた彼のことだった。

私に見せた切なそうで…それでいて安心したような顔。

あの時私は……彼が来たことにどこかホッとしていた。


薫ではなく、戸澤さんだったことに。


私の心の中にはもしかして、彼を愛してみようという準備が出来ているのだろうか………。


あんなに、許せなくて憎いとさえ思った彼なのに。


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