いと。
「………どこへ向かうんですか?私、夕食の支度があるので早く帰していただかないと困ります。」
仕方なく後部座席に乗り、まっすぐ見つめてそういった私に曜の父親であるこの人はジロリと視線を向けてきた。
「…行き先などない。話が済めば帰す。」
威圧的な態度。人を明らかに見下す視線。
この人もそういう人種なんだ。
「…さっさと曜と結婚しろ。あいつと結婚すれば何不自由ない生活をさせてやるぞ。」
「そんなもの目当ての結婚なんて望んでいませんが。」
「…君が決めればそれで全てがうまくいくんだ。全て丸く収まる。
曜だってそれでいいと言ってる。」
この人は自分の子供を、人として見ているのだろうか。
「どうして子供の人生を勝手に決めるんですか!?」
我慢ならずに思わず声を荒げてしまう。
「それが幸せだろう?金には困らない。苦労もない。いいじゃないか。」
「そんなの幸せじゃない。そんな縛られた人生…!」
「曜は家族がそれで幸せならいいと言うぞ。君も家族のためにそうしろ。」
『家族のため』
聞かされた言葉は余りにも私にとって不自然だ。
「あんな人、家族じゃない。
………私はこれで失礼します。」
信号で止まったのを見計らい強引に車から降り、振り返らずにその場を後にした。