いと。
『たまには眞城に立ち寄ってほしい。』
『あの子の話を聞かせて。』
寂しそうにそう語る声を聞かせられては、行かないわけにはいかなくて。
翌日は愛の実家へと足を運んだ。
「ようこそ、曜さん。どうぞ遠慮なく寛いでいらして?」
眞城社長は仕事で不在だから気兼ねはいらない。
そう言って紅茶を出してくれた。
「愛の行き先は……わかりそうかしら。」
すまなそうに聞かれ、手がかりすらないことにこちらも申し訳なく思う。
「いえ…何も。」
「…そう。」
「………………。」
「………………。」
重苦しい空気の漂う中、先に口を開いたのは向こうだった。
「私は………これまであの子を、たったの一秒も愛してこなかったの。
主人に知られず堕ろすなんていう勇気もなくあなたのお父さんに責任を取れなんて詰め寄る度胸もなく…ただ、確実に大きくなっていくお腹に怯えていた。
逃げるように記憶や事実を心の奥底に追いやって鍵をして…
全てを忘れ、あの子を拒絶した。
………私の元へ来るたびあんなに、愛されたいとサインを出していた幼い子供時代にすら頭を撫でることも手を握ることもしなかった。
今のこの状況は………全て私の罪よ。
ちゃんと、愛してやっていれば……。」
窓の外の秋晴れの空を見つめながら、その瞳からは涙が溢れていた。
記憶のない間のことまで鮮明に覚えているというのなら、愛すべき子をないがしろにしてきた罪は耐え難いのかもしれない。
「………愛は、強い女性です。あなたが負った苦しみをちゃんと理解しているし、あなたを…恨んだり嫌ったりすることもない。
ただしっかり受け止めて、仕方のないことだったと納得しています。
奥様が泣く必要はありません。
…でもきっと、自分を思って泣いてくれたと聞いたら全てが報われるでしょう。
会えたら…抱きしめてやってください。」