いと。
数日後の休日、久しぶりに薫と車で出かけることにした。
何度か行ったことのある、山奥の湖。
ここで、静かに寄り添うのが好きだった。
平日だったこともあり、私たち以外は誰もいない。
聞こえるのは、夏を迎えるにふさわしく生い茂った木々の葉音と自由な鳥たちのさえずり、水の流れる涼しい音。
「やっぱり街中より涼しいよね。」
「そりゃあね。空気も綺麗だし。
そうだ、夏向けの冷製メニュー増やしたいんだよね。アイデア貸してよ。」
ほとりのベンチに腰掛け、肩を寄せてゆったりと他愛もない会話をする。
薫の声を聞いているだけで、
薫の温もりを感じているだけで、
不安で澱み曇った心が浄化される気がした。
「………薫とずっと、くっついていられたらいいのに。」
無意識に心の声が出る。
しかもそれは思ったよりもずっとずっと寂しげに響いて…自分で自分が嫌になってしまった。
「……ごめん。もう言わない。」
そう言って俯いてしまった私は、薫の瞳にどんなに小さく見えただろう。
「………愛。」
薫はただただ優しく、まるで『大丈夫』とでも言うように私の名前を呼んで抱きしめてくれた。
「愛…。俺の愛しいひと………。」