いと。
「眞城さん!」
薫のお店の帰り、駅へ向かってひとり歩いていると突然声をかけられた。
最近ちょくちょく聞くこの声は、顔を見なくても何となくわかってしまった。
「…戸澤さん、こんばんは。」
彼の方を向き、足を止める。
いつも通り、彼はどこか無表情で、何か見透かされているかのような気さえする。
……やっぱり何だか苦手なような…。
「偶然ですね。どちらか行っていたんですか?」
「あぁ、はい。でももう帰ります。
またお店にいらしてくださいね。じゃあ。」
極めて事務的な内容だけやんわりと告げて立ち去ろうとすると、
「待って。」
そう咄嗟に手首を掴まれた。
………な…んか、嫌だこの人。あまり近づいて欲しくない。
「ちょっとだけ、飲みませんか?」
「……………」
仕事の上でのお付き合いなら我慢できるけれどプライベートには踏み込まれるのはごめんだ。
「いえ、もう恋人と少し頂いてきましたし、明日も仕事なので帰ります。」
さりげなく掴まれていた手を払い、恋人がいることを明確にしながら誘いを断る。
これで大人しくしてくれれば……。
そう思ったのに、甘かった。
「…ふっ。浮気のお誘いでもしてると思ってる?それともあなたの彼、お店の客とちょっと飲むのも浮気に入ると思ってる?」
『小さい男だね』
まるでそうとでも言いたそうに冷たく笑って挑戦的な視線を向けてくるこの人に、
私はこの時とても、嫌悪感を抱いた。