常務サマ。この恋、業務違反です
「……で? どうしよう、はわかったけど、俺にどんな答えを求めてるんだよ」


ランチ時。
私は加瀬君を丸の内に呼び出して、イタリアンレストランの片隅で、悶々とした胸の内を吐き出していた。


「はっきり言って、そんなぶつ切りの状況を網羅されたところで、俺にはなんのアドバイスも出来ん」


呆れ果てた一言を呟いてから、加瀬君はアイスコーヒーのストローをくるくる回して一口吸い上げた。


「加瀬君、冷たいよ」

「じゃあ、逆に聞くけど、お前が俺だったらどう解釈出来るんだよ?
『ちょっと接近して親近感湧いて来ました』『プライベートで飲みに誘われました』『せっかくだから親しくなった女子社員二人も誘いました』『そうしたら外出の同行を拒否されました』
……何がどう『どうしよう』なのか、そもそもどうして『どうしよう』なのかもさっぱりわからん」

「う……」


確かに加瀬君の口から客観的に聞くとその通りだ。
藁にも縋る思いでつい加瀬君に相談したけど、際どい部分を絶妙にはしょって話したせいで、私でも何が言いたかったのか良くわからない。


「……っつーか。飲みに誘われるほど懐に潜り込めたなら、別に外出の同行なんか出来なくてもいいんじゃね?
高遠さんが留守の間に書類やら何やら調べることだって出来る。
派遣期間も後二ヵ月くらいしかないんだし、いつまでも高遠さんにひっついてるよりは、社内でもっと調査した方がいいと思う」


テーブルに頬杖をついて私をジトッと見つめる加瀬君の言葉も、本当にいちいちその通りだと思う。
それでも納得出来ないのは……私の気持ちの問題だとしか言いようがない。


そしてそれを全部省いて話したせいで、加瀬君の返事が私には納得出来ない。
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