常務サマ。この恋、業務違反です
頬杖をついて私の反応を観察する加瀬君に、ゴクッと息を飲んでから小さく何度か頷いた。


「出逢いの裏目的は潜入。接近は騙して懐柔すること。
そりゃ、後ろめたくなるよな。罪悪感もいっぱいだよな」


早口な言葉がとても辛辣に聞こえる。
それでも加瀬君の言う通りだから、私は唇を噛んで頷きながら俯いた。


「……罪悪感が強くなったのは、相手に忠実でありたいって願望をお前が持ってるから」

「……え?」

「最初の一週間で、お前が英語勉強しようかな、なんて言い出した時点で、ヤバいかもって思ってたんだ。
でもまさかこんなに早く……とは思ってなかった」


自分の言葉に勝手に納得して行く加瀬君に、私は必死にブンブンと首を横に振った。


「誤解……酷い誤解だよ、加瀬君。私、本当にっ……」


そう言いながら、言葉に詰まって黙り込んだ。
加瀬君はフウッと息をついて、私の目線の先のフォークをまたくるくると動かし始めた。


「わかった。それなら、葛城の言う通りでいい。俺もこれ以上お前の気持ちに踏み込むようなこと言わない。だけど……」


意識的に言葉を切って、加瀬君は私が顔を上げるのを待っている。
沈黙に導かれるように、私は強張った顔を少しだけ上向けた。
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