常務サマ。この恋、業務違反です
「あれは……派遣会社の担当者で」


頭に加瀬君の姿を思い浮かべながら、動揺を隠すように短い言葉で返事をした。


「業務フォローに面会来てるんだろう? そのくらいはわかってる」

「それなら、どうしてそんな聞き方するんですか」


心の動揺を隠すように、無理矢理笑みを浮かべてそのままはぐらかすつもりだった。


「ずいぶんと親しそうだったから」


私の目論見は、高遠さんの淡々とした声に飲み込まれる。


顔が強張ったのを意識しながら、なんとか誤魔化そうと、私は目を瞬かせた。
そんな私を見遣る瞳がなんだかとても冷たくて、私は慌てて俯いた。


「親しい、って、そんなこと……」

「そんなに何度も会ってるわけじゃないだろう? それほどよく知らない男に誘われて、気軽に約束出来るような女なのか、あんたは」

「そんな……! 違います!」

「でも、今日も昼一緒だっただろ。俺もたまたま近くのレストランでランチ会合だったんだ」

「っ……」


何をどう見られていたのかわからない。そして高遠さんがどう捉えたのか……。


だけど、そんな軽い女だと思われたくなかった。


私と加瀬君は同じ会社の同期だから、二人で飲みに行くのもほとんど当たり前だった。もちろん、ランチだって……。


それでも、その関係を知らない高遠さんから見たら、私達の関係はどう見えるのか。
上手い言い訳が思い付かず、私は静かに焦っていた。


どう答えたら高遠さんの誤解を解けるのか、頭を働かせるのが精一杯だった。


「昨夜……俺と二人が嫌だったんだろ? だから警戒して、わざわざ国際部の二人を巻き込んだ」

「それは……だって、二人とも高遠さんと話したいって言ってたから……」

「俺が誘ったのは、あんただけのつもりだった」


『本当は葛城さん一人を誘ったんじゃないの?』


昨夜新庄さんに言われた言葉が胸を過って、答えるべき言葉を見失った。
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