常務サマ。この恋、業務違反です
『恋人』になったとはいえ、高遠さんの仕事が激務なことに変わりはない。


平日はこれまでと同じように昼も夜も仕事して、お昼ですらランチ会合や上司との約束が入ったりして、一緒にいられるのは仕事中だけ。


いくら仕事の鬼といっても、ちょっとは変わるかな、なんて考えていた自分を慰めてあげたい。


名前の呼び方だって相変わらず『葛城さん』か『あんた』で、私も『高遠さん』のまま。
ほんの少しも甘い雰囲気は漂わないどころか、むしろ今まで以上に意識的に公私混同を避ける空気が感じられて、何時間一緒にいても高遠さんはぶれない。


初めて迎えた週末は、取引先で不幸があって、高遠さんも休日を潰して参列した。


おかげで、十日以上経っても私には『恋人』になった実感が全く湧かない。


あの時感じた幸せが、本当は夢だったんじゃないかとすら思える絶妙なまでの『放置』


少しはかまってくれてもいいじゃない、と不満は尽きなかったけど。


流暢に英語、ドイツ語を操って電話対応する姿も、会議の席で眉間に皺を寄せながら部下の報告を聞く姿も、見惚れてしまうくらいカッコ良くて。


こんな人が私のことを好きだって言ってくれたんだなあ、と。
ほんわかした気分になってしまう辺り、私の自覚も不十分なんだろう、と感じた。
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