常務サマ。この恋、業務違反です
ああ、本当に……。
次のデートはいつかな、と深い深い溜め息をつきたい気分だった。


ちょうど走って来るタクシーを見つけて、私は気持ちを切り替えるように身を乗り出して手を挙げた。


私達の前でタクシーの後部座席のドアが開く。
腕を引いてシートに乗せると、高遠さんは私を上目遣いで見つめた。


「乗らないのか?」

「ここからだと、逆方向になっちゃうんで。それほど遠くないし、電車で帰ります」


そう言って笑ってから軽く頭を下げた途端、思いっきり腕を掴んで引っ張り込まれた。
勢い余って高遠さんの膝の上に倒れ込んで、焦った私を無視してドアが閉められる。
頭上で高遠さんが涼し気に、用賀までと行き先を告げるのが聞こえた。


「そんなに信用出来ないなら、一緒に来て監視してくれていいよ」

「えっ」

「って言うか、本当に大丈夫だし」


そんな言葉を聞きながら、私はなんとか身体を起こした。
走り出したタクシーのシートに背中を吸い寄せられるのを感じながら、私はチラッと高遠さんを横目で見遣った。


長い足を少し窮屈そうに組んで腕組みしながら、高遠さんは私に、ん?と首を傾げて見せた。


その普通過ぎる様子に、私は慌ててブンブンと首を横に振った。
そして、無駄にドキドキと高鳴り始めた胸の鼓動を意識して、そっと手で押さえた。
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